ご挨拶
この度、兵庫県尼崎市に、「みつるクリニック 糖尿病代謝内科」を開院いたしました。二十数年間に及ぶ大学病院勤務と約二年半の一般急性期病院勤務を経て、医師免許を拝領してからちょうど三十年目の春に、大学時代から十数年間お世話になった、ご縁の深い兵庫県に戻って来られることになりました。
「糖尿病代謝内科」と聞いて、少しピンと来ない方もおられるかと思いますが、糖尿病をはじめ、脂質異常症(高脂血症)、高血圧症、肥満症、メタボリック症候群、高尿酸血症などの、「生活習慣病」を対象に、専門医と専門スタッフによる診療を行うクリニックとご理解下さい。「生活習慣病内科」、「メタボ内科」などと呼ぶ方が、わかりやすいかも知れません。
血糖値が高い、血圧が高い、コレステロールや中性脂肪が高い、ボディ・マス・インデックス(BMI)値が大きい、尿酸値が高い。これらの生活習慣病を現す定義はいずれも、血液検査の結果、測定の結果、計算の結果ですから、いわば単なる数字に過ぎず、多くの場合、「痛い」、「苦しい」、「しんどい」、「辛い」などの、肉体的苦痛を表現する形容詞とは直結していません。このため、患者さん自身は、すでに「病気」になっておられる場合でも、あるいはその前段階におられる場合でも、なかなか自分が病気であるという自覚や認識をもちにくい疾患ばかりです。しかし、これらの疾患一つ一つは、放置すれば心筋梗塞や脳梗塞などの重大な疾患につながる土壌となることがわかっています(1-4)。また、これらは、一人の患者さんに重複して起こりやすいことも、理解されるようになってきました。「生活習慣病」が二つ、三つと重なってくると、生命を脅かしかねない重大な疾患を発症するリスクが、ドンドン大きくなってくるわけです(5,6)。このため、「生活習慣病」は、単に「数値が高い」だけで「肉体的苦痛を伴わない」時期から、ちゃんと「数値を下げる」治療が必要となります。
一方で、「生活習慣病」のもう一つの共通点は、食生活や運動習慣といった、患者さん一人一人のライフスタイルと大きく関係していることです。ライフスタイル、すなわち生活習慣ですね。非常に簡単に言うと、「美味しいものの食べ過ぎ」、「塩分の摂り過ぎ」、「運動不足」などを続けると、病気になる可能性が高くなる。そういう共通点です。
いつ、何を、どれだけ食べるか、毎回カロリー計算しておられる方、それほど多くはないと思います。好きなものや美味しいものを、好きな時に、好きなだけ食べたい。人間として当たり前の欲求です。これは、患者さん一人一人の自由な嗜好ですから、その習慣を変えていくことは非常に難しいことです。コンビニやスーパー、ファストフード店やファミレスがあちこちにあって、好きな食べ物がいつでも簡単に手に入るのに、それを我慢してお店の前を通り過ぎるのは、かなり難しいですよね。食べログ、ぐるなび、ホットペッパー、、、今では簡単に美味しい店が検索できるのでなおさら。
また、車のある生活。これも今では当たり前になっています。仕事では、通勤や営業に、車が不可欠です。家庭でも、主婦の方々のちょっとしたお買いものに、休日には家族揃ってのお出かけに、日常のあらゆる場面で車が利用されています。当たり前過ぎて、普段はわざわざそんなこと、意識したことなどありませんよね。最近、自分の足で、歩いてないなってこと。ひょっとしたら、万歩計つけた方が良いのかも、、、?
わかっているけど、つい、食べてしまった。美味しいから。わかっているけど、飲んでしまった。やっぱり、美味しいから。わかっているけど、ついつい、車で出かけてしまった。早いし、ラクだから。わかってはいても、なかなかご自分一人では、治しにくいです。だって、それ、習慣になってしまってます。長い間かけてついてしまったクセですから。だから、「生活習慣病」と呼ばれています。
当院のC.I. (Corporate Identityと言うより、Clinic Identity?)は、世界糖尿病デーのシンボルマークである「ブルーサークル」をモチーフとしてデザインしていただき(7,8)、クリニック関係の様々な印刷物や、このホームページにも、このC.I.を使用させていただいています。真ん中に位置するサークルの中の紺色のドットは、私とクリニックのスタッフを現わしています。
生活習慣病の患者さん、予備軍に入ってしまった方、健診でイエローカードを貰ってしまった方。是非、一度当クリニックに足をお運び下さい。「生活習慣病」を起こしてしまう、良くないライフスタイルや、お一人ではなかなか治せないクセを、どうすれば修正していけるのか、患者さんお一人お一人の生活背景に基づいて、少しずつ、着実に改善していくお手伝いをさせていただきたいと考えております。
当院にお越しいただければ、大小さまざま、濃淡さまざま、たくさんのブルーサークルが、手をつなぎ合い、寄り添い合い、重なり合っている模様を、ご覧いただけるのではないかと思います。患者さんお一人お一人と当院スタッフのブルーサークルが、互いに手を取り合い、助け合い、協力し合いながら、「糖尿病」、「生活習慣病」と一緒に、笑顔で「共に生きている」様子を、感じ取っていただければと思います。
2016年4月1日
みつるクリニック 糖尿病代謝内科
院長 柱本 満
- Reaven GM. Role of insulin resistance in human disease. Banting lecture 1988. Diabetes 37:1595–1607, 1988.
- Ferrannini E, Haffner SM, Mitchell BD, Stern MP. Hyperinsulinaemia: the key feature of a cardiovascular and metabolic syndrome. Diabetologia 34:416–422, 1991.
- Kaplan NM. The deadly quartet. Upper-body obesity, glucose intolerance, hypertriglyceridemia, and hypertension. Arch Intern Med 149:1514–1520, 1989.
- Hjermann I. The metabolic cardiovascular syndrome: syndrome X, Reaven’s syndrome, insulin resistance syndrome, atherothrombogenic syndrome. J Cardiovasc Pharmacol 20(Suppl8): S5–S10, 1992.
- Kahn R, Buse J, Ferrannini E, Stern M. The metabolic syndrome: time for a critical appraisal. Joint statement from the American Diabetes Association and the European Association for the Study of Diabetes. Diabetologia 48:1684–1699, 2005.
- Alberti KG, Zimmet P, Shaw J. Metabolic syndrome—a new world-wide definition. A consensus statement from the International Diabetes Federation. Diabet Med 23:469–480, 2006.
- http://www.idf.org/bluecircle
- https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B3%96%E5%B0%BF%E7%97%85
略歴
学歴
昭61年3月 神戸大学医学部医学科卒業
平 5年3月 神戸大学大学院医学研究科(内科学系)修了、医学博士
職歴・研究歴
昭61年7月 神戸大学医学部附属病院 研修医
昭62年7月 加古川市民病院 内科医員
平元年4月~平6年3月 神戸大学大学院医学系研究科(第二内科:春日雅人教授)
平元年5月~平2年9月 東京大学大学院医学系研究科(第三内科:門脇孝講師)
平 7年 2月 豪州クインズランド大学 分子細胞生物学研究センター 研究員
平14年 8月 愛媛大学医学部 臨床検査医学(糖尿病内科)講座(牧野英一教授) 助手
平18年 6月 愛媛大学大学院 分子遺伝制御内科学 講師
平18年12月 川崎医科大学 内科(内分泌・糖尿病)(加来浩平教授) 講師
平23年 4月 川崎医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 講師
平25年 8月 在日本南プレスビテリアンミッション淀川キリスト教病院 糖尿病・内分泌内科 部長
平26年 4月 同 糖尿病センター長兼任
平28年 4月 みつるクリニック 糖尿病代謝内科 開院
所属学会・資格
- 日本内科学会 認定内科医・研修指導医、中国支部評議員
- 日本糖尿病学会 専門医・指導医、学術評議員
- 日本内分泌学会 評議員
- 日本病態栄養学会 評議員
- 日本肥満学会
- アメリカ糖尿病学会(American Diabetes Association)
- ヨーロッパ糖尿病学会(European Association for the Study of Diabetes)
- アメリカ細胞生物学会(American Society for Cell Biology)
受賞歴
- 2001年4月 第14回日本内科学会奨励賞